レセプト債・控訴審について

金融商品取引業者は、顧客の知識、経験、財産の状況、投資目的やリスク管理判断能力等に応じた取引内容や取引条件に留意し、顧客属性等に則した適正な投資勧誘の履行を確保する必要がある。

金融商品取引業者及びその役職員は、顧客に対して誠実かつ公正に業務を遂行しなければならない。

顧客が金融商品取引についての疑問や金融商品に関する認識に誤りがあれば、正しく認識するよう情報を提供するためには、金融商品取引について正確な知識を備えておく必要があり、営業員の顧客対応において、正確な情報が提供されているかについて業務の健全かつ適切な運営を確保する観点から、管理部門がモニタリングを行い、迅速な対応ができるような体制を整えること求められている。

上記前提から、以下の点についての検証が必要であろう。

たとえ、顧客の投資目的や投資経験等から本件レセプト債の取引開始基準に適合すると金融商品取引業者(被告)側が判断したとしても、商品の仕組みやリスク等を十分に理解することなく、担当者からの勧誘に応じていただけということも考えられる。

顧客の適合性を判断する際には、顧客の取引経験のみに着目するのではなく、顧客の理解度及び類似商品の買付け経緯を踏まえた上で、投資意向を正確に把握し、適正な投資勧誘の履行を確保する必要がある。

また、原告側に75 歳以上(金融商品取引業者ごとに基準が異なる)など高齢者に該当する高齢顧客は、過去に投資経験があった場合でも、加齢に伴い理解力が低下している可能性があり、当該顧客の現時点での状況を確認しながら勧誘を行うことが、取引開始基準や適合性原則の判断に当然含まれるものである。

さらに、高齢顧客である場合には、金融商品取引業者(被告)は、自社の社内規則に基づき、自社の役席者が、高齢顧客の家族の同席を求めた上で、面談と商品の仕組みやリスク等を説明した記録・商品の内容等について説明を聞いて判断するよう注意喚起が、なされているはずなので、金融商品取引業者(被告)側にその記録の提出を求め、然るべき面談・説明・注意喚起がなされているかを検討するのも一つの手である。

金沢レセプト債訴訟第1審判決について

金沢レセプト債訴訟について

控訴審における請求の追加・変更を求める。

第一審判決での「証券側にレセプト債を審査する義務はない」とする判断について、レセプト債等の商品性に関して審査する義務を、竹松証券側に直接的に課す法的義務はなかったとしても、同社は金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、虚偽の表示(略)をする不法行為について、北陸財務局長が検査した結果から、金融商品取引法第38条第8号(平成26年5月30日法律第44号による改正前は同条第7号。)に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第2号に掲げる「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、虚偽の表示(略)をする行為」に該当するものと認められ、法令違反の事実を認定し、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項に基づき、行政処分を行うよう勧告し、北陸財務局は、平成28年6月17日、同社に対し、金融商品取引法第51条の規定に基づき、業務改善命令の行政処分を行っている事実があり、この北陸財務局及び証券取引等監視委員会による不法行為の認定事実、並びに、金融商品取引業者等には、金融商品取引法第40条から43条において、顧客の知識、経験、財産の状況や目的に応じて勧誘行為や販売行為を行い、善良な管理者の注意を持って各業務を行わなければならないと規定されていることから、同社には、レセプト債等の取扱いについて、第一種金融商品取引業及び第二種金融商品取引業を営む同社の地位に応じた相応の思慮分別を要求される調査等を行う義務があり、その義務を十分に果たしたと言えない状況の商品についての勧誘行為や販売行為は、顧客の知識、経験、財産の状況や目的に応じたものである行為とは言えない状況と言える。これら同社の金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関しての虚偽表示並びに適合性の原則違反および善管注意義務違反の不法行為により受けた損害について賠償を求める。なお、北陸財務局及び証券取引等監視委員会の認定事実について検証が必要な場合には、これら検査資料の情報公開を求める。